どうも、三尺です!
ゲームを愛する人にとって「発売日延期」って嫌なキーワードですよね。
もう時効だと思うのですがズバリタイトルを出すと問題がありそうなので、某タイトルの発売延期の実情を暴露したいと思います。
そのタイトルとは?
セガサターン(以下SS)のソフト、とだけここでは記しておきます。当時のメモが残っているので、それを見ながら書いています。
以下の文章にタイトルのヒントがあるかもしれないので考察してみて下さい。
10月 まずは移植決定!
はい、某タイトルとはSS新作ソフトではありません。
まず、某年の10月に移植が決定したと連絡がありました。
まずはプランナーチームがどの様に移植するのか検討に入ります。
何しろ解像度が違いますから、そのまま移植はできないのです。
ちなみに当時の僕はグラフィックデザイナーチーフでした。
この時点での発売予定日は翌年1月末です。そして開発終了日は12月末です。
11月 方針が決まる
某年11月半ばに移植方針が決まりました。
基本的にそのまま移植する通称ベタ移植でしたが、このままでは見劣りするとの事で、新シナリオ追加が決まりました。
当初の予定は年末で開発終了だったのですが、何の連絡もないまま年を越します。
まったり好きな感じで背景を描いてましたね。
1月 B社よりSさんがやってきた
年を明けると、B社よりSさんというプラグラマーが出向でいらっしゃる事になりました。
某パズルゲームの移植を行った事がある方で、半月程度で作業を終わらせると豪語していましたが…なかなか思うようには進んでおらず。
Sさん曰く「あと少しなんだよなぁ」だそうですが、別のプログラマーに聞くと、「90%は移植ができているんだけど、このタイトルは旧ハードの性能をほぼ使い切っているので、残りの10%が非常に難しい」との事。
3月 ベタ移植諦め
3月になり、ベタ移植は不可能!との判断が下り、社内プログラマーにより1から作り直す事が決定しました。
この時点での開発終了日は4月末となり、発売日はプラス1か月ですから、5月末。
この時点で、既に4か月発売日が伸びています。
5月 新規開発も難航
デザイナーチームの作業はほぼ終わっていましたが、プログラマーが連日遅くまで作業をする日が続きます。
5月末になってもモニターにゲーム画面が出ていません。
この頃にまたスケジュールが修正され、開発終了日が7月10日、発売日は9月末となりました。
6月 モニターに表示された!
6月になり、やっとモニターに表示されるようになりました…が、表示されただけで全然ゲームは動いていません。
でも、デザイナーとしては、旧ハードとの色味の違いが分かるようになっただけでも大きな進展です。
6月中旬になり、プログラム進行が芳しくなく、またもやスケジュール変更。
開発終了日が7月末、発売日は変わらず9月末です。
7月 またもやスケジュール変更
開発終了日が8月中旬、発売日は10月末です。
ここまで淡々と書いておりグラフィックはヒマなんでしょ?と思っているかと思いますが、予定が伸びた分新たな仕様追加が降ってくる刑が執行されておりまして、ずっと忙しい日々でした。
メモによると、この頃になって魔法エフェクトが表示され始めたようです。
そして新規追加エフェクト開始なんて事があった模様w
8月 ここで新仕様追加
順調に(?)予定は未定、遅れていましたが、ここで新しい仕様が追加されました。
メッセージ部分は無機質なテキスト表記だけだったのですが、横に顔グラフィック(以下顔グラ)を追加する事が決まりました。
これは一大事です。新規グラフィック書き起こしですから。
そして、何度目か忘れるくらいのスケジュール変更。
開発終了日が10月下旬、発売日は12月上旬で、既に最初の予定から11カ月の延期です。
開発の我々も大変でしたが、発売元会社の担当も生きた心地してなかったんじゃないかと思います。
10月 また新仕様追加
10月中旬にまたスケジュール変更。
開発終了日が11月下旬、発売日は12月下旬ですが、この頃からヘルプムービーを撮り始めます。やるかやらないか保留だった仕様ですけど、ようやくやれる事に決まったんですよね。もう伸びに伸びた開発体制で嬉しくも何も無かったんですけど。
12月 やっと終了!
もう末期になるとグダグダでメモも残っていないんですが、少しずつスケジュールが伸びていく中、12月頭に開発終了、翌年に無事発売されました。
終わった時の事はさぞ鮮明に覚えているかと思いきや全く覚えていませんw
終わりに
このタイトルの例は稀有だと思います。他はきちんとやっていたと思います(多分)
そして今の時代にこんな事やっていたらディレクターは更迭され、早々に開発中止になっている事と思います。
開発期間を延ばしてまで良い物を作る、それが美徳と言われていた時代で、黒澤監督の七人の侍もそんなエピソードがありますが、時代は変わっています。
ただ…、この時代があるから今の自分がある訳で、こういう開発も繰り返してみたいけど繰り返したくない。
不思議な葛藤と違和感を覚えつつ、現在もゲーム作っているオジサンであります。